夕暮れ時、
所用を済ませてから
ある喫茶店に入った。
ショートカットで
笑顔の素敵な若いお姉さんに
ぼくはアイスコーヒーを注文して
景色の良い窓際に腰をおろした。
そこで、読みかけの小説を読んでいると
ガランと音がし、
仕事帰りのサラリーマンが
入ってきた。
「すいません、一人なんですけど」
30代前半のいかにも
欲求不満顔の醜男(ブオトコ)
だった。
「いらっしゃいませ♪」
笑顔の素敵なお姉さんが
男を店の奥に案内すると、
そのスカート姿を(脚を)
下から上まで舐めまわすように
醜男は卑しい目つきで
見ていた。
ぼくはアイスコーヒーを飲み干し、
おかわりにアルコール入り珈琲を
注文した。
待ってる間に横から
会話が聞こえてきた。
「いや、コーヒーってのは厚みがあるからこそ味わい深くて、苦いとか酸味の話じゃないんだよね。関東では酸味の利いたコーヒーがブームなんだけど~」
なんと、先ほどの醜男が
ウエイターのお姉さんに
注文もせず、
コーヒーのうんちくを
語り散らしていた。
さらには、
「ぼくの行きつけのお店は有名人や凄い人がけっこう頻繁に来るからさ〜こだわりが〜」
コイツ、自分の話ではなく
他人の自慢話をお姉さんに
しまくってるではないか。
自分の自慢でもウザいのに
他人の自慢か、、痛いヤツだな。
しかも、お姉さんはそっぽ向いて
イヤがってるのにそれに気付かない醜男。
機関銃のごとくブワーッと
ひとしきり話したかと思うと、
ようやくコーヒーを注文。
ウエイターのお姉さんが
気の毒に思えた。
正直、ぼくは関係ないけど
この女性にチップをあげたい気分だった。
その後も醜男は一杯のコーヒーで
1時間以上も粘って、
お姉さんが通るたびに
話しかけていた。
見かねたマスターが奥から出てきた。
「すいません、店の者も仕事中ですし、うちは夜の店でもスナックでもないので、他のお客様の迷惑になるようなことをするのならお引き取り願えますか。お代は結構ですので。」
そう言われて、
オタク面で
いかにも欲求不満顔の醜男は
無言で店を後にした。
お店の空気に平和がもどった。
0コメント